病気で亡くなった物件のお祓いに法的な義務はなく、実施すべきかはオーナーの判断に委ねられます。お祓いをする必要はないとはいえ、部屋で人が亡くなったという事実が買主や借主に与える精神的な影響を考えればお祓いをしたほうがよいケースもあります。買主や借主から見ても、お祓いをしたオーナーに対しては信頼や安心を感じやすいでしょう。
当記事では、病気で亡くなった物件のお祓いをしたほうがよい理由や費用相場、お祓いをするタイミング、お祓いの注意点などを紹介します。
目次
1.病気で亡くなった物件のお祓いに法的義務はない
お祓いは神道の宗教行為であり、罪や穢れ・災厄などの不浄を心身から取り除くための神事・呪術を指します。建築工事の前に行う地鎮祭もお祓いの一種です。
お祓いは霊を祓うこと以上に「供養すること」を重視しています。亡くなった方の恨みや悲しみといったマイナスな感情を消すことが、お祓いの主な目的です。事故物件は、部屋で人が亡くなったという事実が買主(借主)に精神的な影響を与えるため、お祓いをするケースがあります。
過去に孤独死や自殺などが起こった事故物件でも、お祓いは法的な義務ではなく、行わなくても問題はありません。しかし、お祓いをすれば死者の魂を弔えるため、買主や次の借主の心情を考慮すれば、行うほうが望ましいと言えます。ただし、お祓いをしたとしても特別な効力が生じるわけではない点には注意が必要です。
2.病気で亡くなった物件をお祓いしたほうがよい理由は?
病死などの自然死物件の場合は基本的に、事故物件に該当しません。ただし、遺体の発見が遅れて物件に汚損が発生した場合は事故物件となります。
事故物件に該当する場合でもお祓いは義務ではなく、行う場合は神主さんへの手配といった手間や費用負担が発生します。それでもお祓いをしたほうが望ましい理由は、お祓いをすることで安心感が得られるためです。
買主や借主から見ても、事故物件のお祓いをきちんと行った物件オーナーには安心や信頼を感じやすい傾向があります。住み始めてから何かトラブルや困りごとが発生した場合でも、適切な対応をしてくれるオーナーだと思ってもらいやすくなるでしょう。
3.病気で亡くなった物件のお祓いの依頼先
通常、人が亡くなった物件は居住することに忌避感や嫌悪感を抱かれやすく、買主や借主がつきにくい傾向です。しかし、お祓いをすればお祓い済みであることをアピールでき、買主・借主の心理的抵抗感を和らげられます。
事故物件のお祓いの依頼先としては、お寺や神社、管理会社などがあります。以降ではそれぞれ詳しく解説するため、参考にしてください。
3-1.お寺や神社に依頼する
事故物件などのお祓いは、基本的にお寺もしくは神社に依頼します。依頼人が直接お寺や神社に連絡し、日程などを決定するという流れです。
神社の中には、普段から地鎮祭などの不動産関係のお祓いをしているところも多くあります。事故物件のお祓い料金などがある程度決まっているケースも多く、話がスムーズに進みやすいでしょう。
お寺の場合、事故物件の近くや自分の先祖のお墓があるお寺などに相談できます。神社のお祓いは霊に働きかけるというよりも場所を清めるものですが、お寺のお祓いでは霊を取り除き成仏させるための読経供養を行うのが特徴です。
3-2.不動産会社や管理会社に依頼する
お祓いをどこに依頼すればよいか分からない場合は、不動産会社や管理会社に連絡するとよいでしょう。不動産会社は普段から地鎮祭や上棟祭を行っているため、付き合いのある神社やお寺などを紹介してもらえる可能性があります。
また、管理会社には事故物件対応のマニュアルが用意されており、お祓いの依頼先が決まっているケースも多くあります。自分で神社やお寺に依頼することに不安がある場合は、管理会社に連絡すれば対処してもらえる可能性が高いでしょう。
4.病気で亡くなった物件をお祓いする費用相場
居住者が病気で亡くなった物件をお祓いする場合、費用相場は3万円前後です。ほかに、自殺の場合は5万円前後、他殺は7万円前後、無理心中は10万円前後となっています。
病死 | 3万円前後 |
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自殺 | 5万円前後 |
他殺 | 7万円前後 |
無理心中 | 10万円前後 |
上記のように、人が亡くなった物件のお祓い費用の相場は、死因や事故内容によって変動します。一般的には病死の場合が最も安く、心理的瑕疵が高い死因ほどお祓いの料金が高くなる傾向があります。お祓いを依頼すると、「お気持ちで結構です」と具体的な金額を提示されないケースもあるため、ある程度相場を把握しておくとよいでしょう。
また、お祓いの費用相場は物件の規模によっても変わります。例えば、1室のみをお祓いする場合と建物全体をお祓いする場合では費用が変動するため注意が必要です。
5.病気で亡くなった物件をお祓いするタイミング
お祓いは、早めに済ませたい場合も、物件の買主・借主が決まってから行いたい場合もあるでしょう。お祓いのタイミングに細かなルールは決まっておらず、オーナーや買主・借主が気持ちよく取引できるよう配慮されていれば、いつ行っても問題ありません。
ただし、居住者の病死後、発見が遅れて事故物件となった場合、一般的には特殊清掃後にお祓いを行うことが多くなっています。特殊清掃は事故の痕跡をなくすために行う作業であり、特殊清掃でもきれいにならない部分はリフォームをすることになります。特殊清掃後やリフォーム後など、物件を原状回復したタイミングでお祓いをすると、気持ちの面でもリセットされるためおすすめです。
お祓いは物件の引き渡しの直前に行っても問題ありません。物件の買主・借主の中には、自分も一緒にお祓いをしたいと考える方もいます。買主・借主が同席したがる可能性を考慮して、物件の引き渡しの直前までお祓いを行わないのも1つの手です。また、お祓いは何度行ってもよいため、心配な方は特殊清掃後に一度行い、物件引き渡し直前にもう一度行ってもよいでしょう。
6.病気で亡くなった物件におけるお祓いの注意点
居住者が病死し、発見が遅れた場合の事故物件は、お祓いをしたからといってすぐに売却や賃貸をしやすくなるわけではありません。お祓いの目的はあくまで取引を行う人の心理的瑕疵を和らげることであり、事故物件である事実に変わりはないため注意が必要です。
ここからは、居住者が病気で亡くなった物件におけるお祓いの注意点について詳しく解説します。
6-1.お祓いしても告知義務が消えるわけではない
事故物件は、お祓いをしても告知義務が消えるわけではありません。殺人や自殺、火災による死亡などが発生した物件は、事故があった事実を買主や借主に告知する義務があります。2021年10月に国土交通省が策定したガイドラインによると、自然死にあたる病死の場合は、買主・借主への告知は不要となっています。
出典:国土交通省「報道発表資料:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました」
ただし、病死でも発見が遅れて特殊清掃や大規模な修繕などが行われた場合は、告知義務が発生するため注意が必要です。
6-2.お祓いした事実を証明しにくい
お祓いをした事実は、客観的には証明しにくいというデメリットがあります。お祓いをしたことが目に見える形で残るわけではないため、買主・借主に証拠を求められた際は提示するのが難しいでしょう。
ただし、お寺によっては供養証明書、神社によってはお祓い証明書を発行してもらえる場合があります。証明書を希望する場合は、事前にお寺や神社に依頼しましょう。
依頼するお寺や神社が証明書の発行を行っていない場合は、お祓いをしている様子を動画や写真に撮っておくのがおすすめです。動画や写真の撮影は、必ずお寺や神社の許可を得てから行ってください。
7.病気で亡くなった物件のお祓いに関するマナー
居住者が病気で亡くなった物件や事故物件のお祓いでは、いくつか守るべきマナーがあります。物件のお祓いに関する代表的なマナーは以下の3つです。
喪服を着て参加する |
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お祓いの当日には喪服を着て参加しましょう。喪服の用意が難しい場合はダークトーンのスーツで参加し、ネクタイも暗い色を選んでください。お祓いは亡くなった方を供養する目的で行うものなので、必ず故人を弔うのにふさわしい服装で参加しましょう。 |
お供物を用意する |
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お祓いの際には、穀物や野菜・果物、酒、塩といったお供物を事前に用意しておくのがベターです。お供物は依頼先のお寺や神社が用意してくれるケースもあるため、事前に問い合わせをすると安心できます。 |
宗派によって慣習がある場合は、宗派に順ずるようにする |
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お祓いには原則、宗派は関係ありません。しかし、宗派によって慣習がある場合は、できるだけ宗派に順ずるようにしましょう。 |
まとめ
病気で亡くなった物件のお祓いに法的な義務はないものの、お祓いをすることで買主や借主からの信頼を獲得できるメリットがあります。お祓いの依頼先は主にお寺や神社で、費用相場は死因や事故内容によって変動します。病死の場合は3万円前後、自殺の場合は5万円前後、他殺は7万円前後です。
お祓いした事実は証明しにくいものの、お寺によっては供養証明書、神社によってはお祓い証明書を発行している場合があります。証明書を希望する場合は、事前にお寺や神社に依頼しましょう。